帆船日本丸国重要文化財指定の経緯と今後の課題について

 

平成29年5月16日 帆船日本丸記念財団会長 金近忠彦氏講演資料

安田岩男

「写真1」重文答申記念シンポジユムの様子

1 重文指定に至った経緯

(1)なぜ日本丸の重文指定に取り組んだのか?

・日本丸長期保存上の課題(船齢87年、外板厚60%に)

・大規模修繕費の予算が付かない(3年連続要求落ちで見通し無し)

・指定管理者制度適用の弊害(財団の存続も危うい状態)

・30年を経て誘致の経緯を知る人が少ないことが最大の問題
  (→30周年記念イベントを開催;誘致の原点に返る;
  日本丸パークを海洋教育の拠点に)

・港湾都市(ミナト)→海事都市(船・船員)への取り組み
  (①航海訓練所と統合する海事教育機構の横浜誘致、
  ②船員政策をテーマとするIMO世界海の日イベントの横浜誘致、
  ③日本丸展帆ボランティアのコック度呼応通大臣表彰、
  ④日本丸延命化のためのっ国の支援)

・国交省海事局が共鳴、協力

(2)明治丸の例に学ぶ。氷川丸重文指定の運動の流れに乗る

・明治丸改修の募金活動、国庫補助金の導入、海事振興連盟の活動(全額国費で修復工事実施)

・氷川丸重文指定を目指した活動(NYK宮原会長;連盟に氷川丸儒分指定小委設置)

・日本丸の同時指定を文化庁に働きかけ(同じ昭和5年建造、国への功績・文化財価値大)

(3)文化庁のスタンスの変化

・保護一本やりから文化観光路線への流れ(政府の成長戦略に)

・近代産業遺産指定の動き(世界遺産に先を越された)

・氷川丸・日本丸の指定は文化庁にとっても戦略的なチャレンジ

 

 

安田岩男

「写真2」重文答申記念シンポジユムの様子

2 指定(答申)の内容、文化財として評価

(1)海運史上の功績

・半世紀にわたる船員養成の功績
  (54年間、183万キロ、11,500人)

・戦中戦後の国家的な要請に応えてきたこと
  (S18搬送撤去、戦中の船員急速養成・物資輸送、
  S20~戦後の引揚げ輸送2万5000人、
  S25朝鮮戦争時の米兵・韓国避難民輸送、
  S27帆装復旧、S28南方8島への慰霊・遺骨収集公開、
  S35日米修好通商条約100年祭記念航海等国際親善にも
  貢献)

(2)造船技術史

・現存希少な戦前の建造船、また、リベット構造(横肋骨方式)、4檣バーク型帆船の希少な保存例

・初期の国産ディーゼルエンジンを54年間にわたり使用し原形で保存

・(氷川丸のような)用途変更が少なく船体の改造が極めて少ないため建造当時の日本の造船技術をよく伝えている。

(3)保存活用状態

・航海日誌等の日誌類、図書類、船体・機関の来歴、検査記録等がよく保存され
  海運史や技術史研究上貴重な資料となっている

・ボランティアの活用等により良好な保存状態を維持、現在も青年海洋教育に活用している

3 重文指定の意義

(1)市民の関心が高まり、船の歴史・価値が広く市民に知られ、保存活用事業への理解が得られること

(2)市がコスト(税金)をかけて、大規模修繕を行うことへの理解を得る

(3)趣旨に賛同される市民、企業から寄付金を募集する

 

 

参加者懇談風景

「写真3」重文答申記念シンポジユムの様子

4 今後の課題

(1)市民へのPRを行い、保存・修繕への理解・協力を得る
  (→みなと博物館での特別展示の開催、シンポジウム、講演会等)

(2)文化財(文化財保護法)としての原形保存義務と
  (船舶安全法上必要な)修繕工事の調整
  (→保全活用計画の策定)

(3)国庫補助金(文化庁)の導入と寄付金の募集

5 帆船日本丸ガイドの皆さまへのお願い

・お客様に船の歴史を知り、文化財としての保存価値を理解して
  頂くよう案内する

・できれば文化財保存のために貢献(募金)をして頂く様案内する

・みなと博物館「重要文化財指定記念特別展」への資料提供(貸し付けも可)のお願い